人の真似をする心理

心理

他人の真似をすることが習慣になっている人、というのは

少なからず存在します。

今回は、真似をするというのはどのような心理状態なのか?ということを

紐解いていきます。

他人の真似をするのはなぜか

まず、他人の真似をしたがる人の意識について掘り下げていきます。


「他人の真似」をするというのは、

その人にとってとでも自然な形で行われます。

というのも、「真似をされる」ほうはとても気になるものですが、

他人の真似をするほうというのは意識して「誰かのマネをしよう!」

としている訳ではないということです。

そして、マネというのは「同様のアイテムを持つ」だけに留まらず

「他人の口癖」「他人の思想」の模倣まで多岐に渡ります。

ところがそれでも模倣するほうというのはほとんど意識しておらず、

むしろ、「え?なんでマネとか言うの?」

「たまたま同じものを持っていただけでしょう」

「偶然に同じ考えを持っていただけ」

「そんな事気づきもしなかった」

というような態度をとり、

実際にその人は無意識下で真似をしているだけですから、

わざとしている訳ではない、という

主張になりがちなのです。

このように、真似というものが意識下で行われるものではなく、

無意識下で行われるものであるという特徴を持ちます。

これは、無意識で「同化したい」「融合したい」という精神状態を

表しています。

「同化したい」という精神状態

「人と同じでありたい」「同じであるべきだ」という心理は

特に恋愛感情を個人に抱いているときに強くなります。

片思いになったり恋人同士になると「お揃いのものを持ちたい」と

思うようになるのはこの「同化したい」という感情が強くなるから、

というのも一つの要因です。


ですからそういう状況下にあるとき、人の真似をしたいと思ったり

真似をされたいと思うのはごくごく自然なことでもあります。



ところがそういう状態でもなく、

そういう関係性でもないのに真似をすることが常態化している、

病的に他人の真似をする、というのは

一種の「取り入れ」という行為になります。

防衛機制「取り入れ」

防衛機制とは自分を守ろうとする心の仕組みになります。

なので、人間はみな、この防衛機制を持っているということになります。

防衛機制というのは種類がたくさんあって、

例えば「資格試験に受からなかったな」と思っても

自分の実力不足だと思えずに

「どうせ、あんな資格とってもこれから需要ないかもしれないしな」

「そもそも寝不足だったから、そのせいだな」

という「合理化」も防衛機制の一つです。

これは満たされなかった欲求を、合理的に捉え納得させるものになります。

取り入れ」というのは数多くある防衛機制の一つです。

ただ防衛機制というのはいくつかの段階があって、

年齢を重ねて精神的に成熟していく中で

どんどん「社会的に受け入れられる」防衛機制に発達・成熟していきます。

つまり、幼いころは精神的にまだまだ未熟なため、防衛機制も

未熟なものが多く発現され、その頻度も多いのですが、

心が発達していくと未成熟な防衛機制を使わずとも

少々のストレスを感じたとしても発達している心は自ら適応するので、

未熟な防衛機制を何度も発動せずともバランスがとれていくのです。

しかしこの「取り入れ」という防衛機制は、未熟な防衛機制と

されています。

つまり幼いころに、ママのマネをして口紅を塗りたがったり

エプロンを着て口癖や仕草まで真似るのは発達の段階において

正常なことですが、

それが20代、30代になっても友人の持ち物を何度もまねたり

全く同じファッションを自分に取り入れたりというのは

「未熟な防衛機制」が発動している可能性があるということです。

そして防衛機制というのは本人の無意識下で、とても自然な形で

行われるものですから、

人のものを取り入れようとしていることに全く気付かない、

というのもおかしな話ではないわけです。

自我の確立がなされていない

このように取り入れの防衛機制が発動される人というのは、

自我の確立がなされていない例が多くみられます。

自我の確立、というのは「自分は自分である」という

認識のことです。一般的にはアイデンティティとも呼ばれますね。

真似をされるのを嫌がる人が多いのは、

他のものではない、自分の「アイデンティティ」から生まれる

趣味嗜好によって自分のファッションや持ち物を選択するからで、

マネされるというのはそのアイデンティティを暗に否定されている

気分になったり、

自分の「個性」というものを曖昧にされていると

感じるからに他なりません。


例えば、自分の友人が少しずつ、

似たような風貌になってきたらどうでしょう。

自分と同じ化粧道具を使って同じようなメイクを施し、

髪型もどんどん切りそろえてきて

服装も同じ格好をして自分と同じ携帯電話を持ち、

口癖まで全部真似るようになってきたら

自分の「自分は自分しかいない」アイデンティティを

脅かされている恐怖感すら感じるかもしれません。


ところが、真似する側というのは

そのアイデンティティの確立がなされていないので、

「私はこういう人間で、これが好きだからこういう持ち物を

選ぶ」というような価値観がまずありません。

では何を基準に選ぶかと言うと、

「個性」ではなく逆に「誰かと同じであるもの」を

選びます。

なぜそうなるかというと、アイデンティティの確立が

なされていないと、ほかの「個性」を取り入れることで、

その「個性を持った人そのものになる」気分を味わえるからです。



憧れの人物、好きなアイドルの模倣をするというのは

そのアイテムを持ち、口癖をまね、仕草を自分のもののように

取り込むことによって

憧れる人物の「個性」や「アイデンティティそのもの」を

自分のもののように感じ取ることができます。

そうやって自分の個性のなさを補う、

という目的を含むのです。

自分そのものでは勝負できない、

けれども威厳のある人の口調を真似れば、

考え方を取り入れれば自分も偉くなったように感じることが出来る。

そのためだけに、本来は興味もないような活動に

熱心になったり、「もともとこういう考えを持っていた」かのように

熱弁することもあります。

もちろん、誰かの真似をして誰かにすり替わるなんてことは

出来ません。

しかし、そういう「精神的な作業」が

自己同一性の確立がされていない人にとっては

自分の心のバランスを保つ一つの安定剤に

なります。

つまり模倣の程度が強ければ強いほど、

その人には「自分らしさ」がなく、

あるいは強いコンプレックスを持ち

自分に自信がないということにもなります。

このように、個人個人の境界線がまるでないような、

個性を持っていない人というのは

「真似される」というのはアイデンティティを脅かすことだから

他人が嫌がる、なんてことを考えもせずに、

ただただ人の模倣をし続けてしまいます。


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